減価償却制度の抜本的見直し(法人税・所得税)
設備投資の費用を早期に回収することにより、新規設備への投資を促進し、経済活性化・国際競争力を強化するという観点から、減価償却制度の抜本的な見直しが行われました。
- 償却可能限度額及び残存価額の廃止
(1) 平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産
償却可能限度額(取得価額の95%相当額)及び残存価額が廃止され、耐用年数経過時点に「残存価額1円」まで償却できることになりました。
新たな定率法の算定方法として250%定率法が導入され、従前の制度に比して早い段階において多額の償却を行うことが可能になりました。
(注)250%定率法とは、定額法の償却率を2.5倍した率を償却率とする定率法により償却費を計算し、この償却費が一定の金額(残存年数による均等償却の償却費)を下回る事業年度から残存年数による均等償却に切り換えて、耐用年数経過時に1円まで償却する方法をいいます。
(2) 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産
従来の償却方法については、その計算の仕組みが維持されつつ、その名称が旧定額法、旧定率法と改められたうえ、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産について、償却可能限度額まで償却した後、5年間で1円まで均等償却ができることになりました。
- 法人の場合
前事業年度までの各事業年度における償却費の累積額が、償却可能限度額(取得価額の95%相当額)まで達している減価償却資産については、その達した事業年度の翌事業年度(平成19年4月1日以後に開始する事業年度)以後の各事業年度以後5年間で残存簿価1円まで均等償却できます。
<償却限度額>
(取得価額−取得価額の95%相当額−1円)×各事業年度の月数/60
- 個人の場合
各年分において不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入された金額の累積額が償却可能限度額(取得価額の95%相当額)まで達している減価償却資産については、その達した年分の翌年分(平成20年分)以後5年間で残存簿価1円まで均等償却できます。
<償却費の額>
(取得価額−取得価額の95%相当額−1円)÷5
- 法定耐用年数の見直し
技術革新のスピードが速く、実態としても使用年数の短い減価償却資産について、法定耐用年数が短縮されました。
改正後の法定耐用年数は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
|
改正前 |
改正後 |
半導体用フォトレジスト製造設備 |
8年 |
5年 |
フラットパネルディスプレイ製造設備又は フラットパネル用フィルム材料製造設備 |
10年 |
5年 |
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特定同族会社の留保金課税制度の中小法人の適用撤廃
特定同族会社(1株主グループの持株割合等が50%を超える会社)の留保金課税制度について、適用対象から中小法人(資本金又は出資金の額が1億円以下の会社)が除外されました。
この改正は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。
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特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の適用緩和
実質的な一人会社(特殊支配同族会社)のオーナー役員への役員給与の一部を損金不算入とする制度について、適用除外基準である基準所得金額を1,600万円(改正前:800万円)に引き上げられました。
この改正は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。
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役員給与の損金算入の見直し
法人が支給する役員給与について、次の見直しが行われました。
- 定期同額給与について、専務から代表取締役への変更等、職制上の地位の変更等により改定された定期給与についても定期同額給与ととして取り扱うこととなりました。
- 事前確定届出給与について、その届出期限を役員給与を定める決議をする株主総会の日から1カ月を経過する日(その日が職務の執行を開始する日の属する会計期間開始の日から4カ月を経過する日等)とされました。
また、同族会社以外の法人が定期給与を受けていない役員(非常勤役員等)に支給する給与については、事前確定届出給与の届出が不要となりました。
この改正は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。
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エンジェル税制の適用期限の延長
特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例(譲渡の日において3年超保有していた特定株式を、上場後3年以内又は上場前の合併・買収等により譲渡したときは、その譲渡益を2分の1に軽減する特例、いわゆるエンジェル税制)の適用期限が2年(平成21年3月31日まで)延長されました。
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リース取引税制の整備
リースの会計処理に関する企業会計基準の変更に伴い、税制の整備が行われました。
- ファイナンス・リースに該当するリース取引のうちリース期間の終了の時にリース資産が無償又は名目的な対価の額で賃借人に譲渡されるものであること等の要件に該当しないもの(以下「所有権移転外ファイナンス・リース取引」といいます。)は、売買取引とみなします。
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人のリース資産の償却方法は、リース期間定額法(償却期間をリース期間とし、残存価額をゼロとする定額法をいいます。)とします。
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃貸人について、リース料総額から原価を控除した金額(以下「リース利益額」といいます。)のうち、実質的に受取利息と認められる部分の金額(リース利益額の20%相当額)を利息法により収益計上し、それ以外の部分の金額をリース期間にわたって均等額により収益計上することができることとします。
(注)上記1から3までの改正は、平成20年4月1日以後に締結するリース契約に係る所有権移転外ファイナンス・リース取引について適用されます。
- 平成20年4月1日前に締結したリース契約に係る所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃貸資産について同日以後に終了する事業年度からリース期間定額法により償却できることととします。
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人が賃貸料として経理した場合においてもこれを償却費として取り扱うことその他所定の規定の整備が行われました。
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上場株式等に係る配当・譲渡益の軽減税率の特例の延長
上場株式等の配当・譲渡益に係る税率を軽減する特例の適用期限を1年延長し、配当に係る特例は平成21年3月31日、譲渡益に係る特例は平成20年12月31日までの措置とされました。
- 本則
株式等の配当・譲渡益に係る税率
・・20%(所得税15%、個人住民税5%)
- 時限的特例
上場株式等の配当・譲渡益に係る税率
・・10%(所得税7%、個人住民税3%)
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税源移譲の実施に伴う住宅ローン減税の特例の創設
所得税から住民税への税源移譲の実施に伴う対応として、住宅ローン減税の効果を確保する観点から、平成19年1月1日から平成20年12月31日までの間に住宅を居住の用に供した場合、住宅ローン減税の控除率を引き下げる一方で、控除期間を10年から15年に延長する特例が創設されました。 この特例は、現行の住宅借入金等がある場合の所得税額の特別控除との選択適用とされました。
現 行 |
居住年 |
住宅借入金等の年末残高 |
適用年・控除率 |
最大控除額 |
平成19年 |
2,500万円以下の部分 |
1年目から6年目まで1%
7年目から10年目まで0.5% |
200万円 |
平成20年 |
2,000万円以下の部分 |
1年目から5年目まで1%
6年目から10年目まで0.5% |
160万円 |
税源移譲対応特例 |
居住年 |
住宅借入金等の年末残高 |
適用年・控除率 |
最大控除額 |
平成19年 |
2,500万円以下の部分 |
1年目から10年目まで0.6%
11年目から15年目まで0.4% |
200万円 |
平成20年 |
2,000万円以下の部分 |
1年目から10年目まで0.6%
11年目から15年目まで0.4% |
160万円 |
(注)平成11年1月1日から平成18年12月31日までの間に住宅を居住の用に供した場合は、税源移譲により減少する住宅ローン減税相当額を申告により、平成20年度分以降の住民税から控除することができるよう措置されています。
この措置は、対象者が市区町村長に対し、「市町村民税及び道府県民税住宅借入金等特別税額控除申告書」を各年度の提出期限までに提出した場合に適用されます。
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住宅のバリアフリー改修促進税制の創設
一定の居住者が、その居住用住宅について特定のバリアフリー改修工事(200万円を限度)を含む増改築等を行った場合に、その住宅を平成19年4月1日から平成20年12月31日までの間に居住の用に供したときは、現行の住宅ローン控除制度よりもバリアフリー改修工事に係るローン部分の控除率を引き上げ、その改修工事に係る住宅ローン残高(1,000万円を限度)の一定割合を5年間にわたり所得税額から控除するという制度が創設されました。
この特例は、住宅の増改築等に係る現行特別控除又は税源移譲対応特例との選択適用とされました。
なお、一定のバリアフリー改修工事が現行特別控除及び税源移譲対応特例の対象となる増改築等の範囲に追加されました。
居住時期 |
住宅借入金等の年末残高 |
控除期間・控除率 |
最大控除額 |
平成19年4月1日から平成20年12月31日まで |
1,000万円以下の部分 |
5年間
一定のバリアフリー改修工事(200万円限度)・・2%
上記以外の工事・・1% |
60万円 |
- 適用対象者
次に該当する居住者に適用されます。
(1)50歳以上の者
(2)介護保険法の要介護または要支援の認定を受けている者
(3)障害者である者
(4)居住者の親族のうち(2)もしくは(3)に該当する者または65歳以上の者のいずれかと同居している者
- 適用となるバリアフリー改修工事
次に該当する工事でその合計額(補助金等を除く。)が30万円を超えるものに適用されます。
(1)廊下の拡幅
(2)階段の勾配の緩和
(3)浴室改良
(4)便所改良
(5)手すりの設置
(6)屋内の段差の解消
(7)引き戸への取替え工事
(8)床表面の滑り止め化
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居住用財産の譲渡に係る課税の特例の延長
居住用財産の譲渡に係る課税の特例制度の適用期限がそれぞれ3年延長されました。
- 特定の居住用財産の買換え等の特例制度
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例制度
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例制度
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寄附金控除の控除対象限度額の引き上げ
寄附金控除の控除対象限度額が総所得金額等の40%相当額(改正前:総所得金額等の30%相当額)に引き上げられました。
<寄附金控除額>
その年中に支出した特定寄附金の合計額 (総所得金額等の40%相当額を限度) |
− |
5千円 |
この改正は、平成19年分以後の所得税について適用されます。
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電子申告に係る所得税額の特別控除の創設
電子申告により、平成19年分または平成20年分の所得税の確定申告書を各年の翌年3月15日までに提出する際、本人の電子署名及び電子証明書を併せて送信した場合に、5,000円(その年分の所得税額を限度)の税額控除が受けられます。
(注)平成19年分に本税額控除の適用を受けた方は、平成20年分においてはその適用を受けることはできません。
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取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例の創設
事業承継をするために贈与者(親)から贈与を受けた特定の取引相場のない株式等については、相続時精算課税制度に係る贈与者年齢要件が60歳(現行:65歳)に引き下げるとともに、非課税枠が3,000万円(現行:2,500万円)に引き上げられました。
<適用要件>
- 当該会社の発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億円未満であること。
- 特例の選択に係る贈与税の申告期限から4年を経過した時に以下の要件をすべて満たしていること。
(1)受贈者が当該会社の発行済株式等の総数の50%超を所有し、かつ、議決権の50%超を有していること。
(2)受贈者が会社の代表者として当該会社の経営に従事していること。
この改正は、平成19年1月1日から平成20年12月31日までの贈与について適用されます。
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種類株式の相続等における評価方法の明確化
配当優先の無議決権株式、社債類似株式、拒否権付株式の3類型の種類株式について評価方法が明確化されました。
- 配当優先の無議決権株式
株主総会での議決権の内容が制限されている株式が該当します。
<評価方法>
議決権の有無を考慮し、納税者の選択により、無議決権株式は5%評価減し、その評価減した分を議決権株式の評価額に加算して調整することができます。
- 社債類似株式
優先配当であること、無議決権株であること、一定期間後に発行会社が発行価額で取得すること、残余財産の分配は発行価額を上限とすること、他の株式を対価とする取得請求権を有しないことといった条件を満たすものが該当します。
<評価方法>
原則として発行価額で評価(既経過利息に相当する配当金の加算は行わない)されます。
- 拒否権付株式
特定の事項について株主総会の決議の他にその拒否権付株式を有する株主の承認が必要となる株式(いわゆる黄金株)が該当します。
<評価方法>
1株あたりの経済的な価値が変わるわけではないので、拒否権は考慮されず普通株式と同様に評価されます。
この評価方法は、平成19年1月1日以降の相続等で同族株主が株式を取得した場合の評価に適用されます。
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相続税の配偶者税額軽減措置の見直し
配偶者が仮装又は隠蔽した財産を、子など配偶者以外の相続人が取得した場合、その仮装・隠蔽した財産に伴って増加する税額について、配偶者の税額軽減措置は適用しないこととされました。
<配偶者の税額軽減措置>
配偶者が相続等で実際に取得した財産の価額が1億6,000万円以下であるか又は課税価格の合計額に配偶者の法定相続分の割合を掛けた金額以下である場合、配偶者には相続税はかからないとされています。
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