退職給付に係る負債の計上


退職給付に係る負債は、退職給付債務に未認識の過去勤務債務及び数理計算上の差異を加減した額から未処理の会計基準変更時差異年金資産(時価)の額を控除した額を「退職給付引当金」の科目をもって計上します。

負債計上額=退職給付債務±未認識過去勤務債務±未認識数理計算上の差異
ー会計基準変更時差異の未処理額ー年金資産(時価)

      

  1. 退職給付債務

    退職給付債務は、合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮して見積られた退職給付見込額のうち、現時点までに発生していると認められる額を一定の割引率及び残存勤務期間に基づいて計算します。

    なお、退職給付債務は、原則として個々の従業員ごとに計算されますが、勤続年数、残存勤務期間、退職給付見込額等について標準的な数値を用いて加重平均等により合理的な計算ができると認められる場合には、当該合理的な計算方法を用いて計算することができます。

    退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い長期の国債、政府機関債及び優良社債等の債券の利回りを基礎として決定されます。

  2. 未認識過去勤務債務

    過去勤務債務は、退職給付水準の改訂等により発生した退職給付債務の増加又は減少部分です。このうち費用処理(費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理を含む。)されていないものを未認識過去勤務債務といいます。
  3. 未認識数理計算上の差異

    数理計算上の差異は、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異です。このうち費用処理されていないものを未認識数理計算上の差異といいます。

    なお、数理計算に用いられた見積数値(基礎率)の変更は重要性基準によって判断し、退職給付債務等に重要な影響があると認められる場合のほかは、見直さないことができます。実務指針では、期末の割引率で計算した退職給付債務額が、期首の割引率で計算した結果と10%以上変動すると推定される場合は、重要性があるものとして、期末の割引率を用いて退職給付債務を再計算しなければならないとしています。

  4. 会計基準変更時差異の未処理額

    会計基準変更時差異とは、新会計基準への切り替えに伴い発生した債務額をいい、15年以内の一定年数に分割して費用処理を行います。
    会計基準変更時差異のうち、未だ費用として処理されていない額を会計基準変更時差異の未処理額といいます。
  5. 年金資産(時価)

    年金資産とは、企業年金制度に基づき退職給付に充てるため積み立てられている資産をいい、資産額は期末における公正な評価額により計算します。

    なお、複数事業主制度を採用している場合、年金資産の計算は次のような比率を用いて行います。

    1. 退職給付債務の比率
    2. 年金財政計算における数理債務の額から年金財政計算における未償却過去勤務債務を控除した額
    3. 年金財政計算における数理債務の額
    4. 掛金累計額

    また、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できない場合は、次の比率を用いて年金資産の額の計算を行います。
    1. 掛金拠出割合
    2. 制度の加入人数
    3. 制度の給与総額

    *複数事業主制度とは、複数の事業主が共同して一つの企業年金制度を設立する場合をいい、連合設立型厚生年金基金、総合設立型厚生年金基金、共同委託契約及び結合契約の適格退職年金制度がこれに該当します。

    年金資産額が企業年金制度に係る退職給付債務に未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異を加減した額を超える場合には、当該超過額を退職給付債務から控除することはできず、前払年金費用として処理します。



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