連結手続上生じた一時差異の会計処理


(一)未実現利益に係る一時差異の処理

  1. 消去された未実現利益については、売却元で支払った税金額を繰延税金資産として計上し、未実現損失については売却元で発生した税金軽減額を繰延税金負債として計上します。

  2. 繰延税金資産の計上額は、売却元で売却年度の課税所得に適用された法定実効税率を使用し、売却元に適用される税率がその後改正されても、税率変更は行いません。

  3. 未実現利益の消去に係る将来減算一時差異の額は、原則として売却元の売却年度における課税所得額を限度とし、未実現利益の消去に係る繰延税金資産の回収可能性については、他の繰延税金資産とその性格が異なることから、判断要件は適用しないこととします。

  4. 少数株主が存在する連結子会社に発生した未実現損益の消去に関しては、税効果額を少数株主持分に配分しなければなりません。

(二)債権債務の相殺消去に伴い減額修正される貸倒引当金

  1. 連結会社相互間の債権債務の相殺消去が行われ、相殺された債権に対応する貸倒引当金額が減額修正された場合、減額修正された貸倒引当金が税務上損金として認められていたものであれば、将来加算一時差異が生ずるため、原則として連結手続上は繰延税金負債を計上します。この場合適用される税率は債権者側の連結会社に適用される税率を用います。

  2. 連結会社相互間の債権債務の相殺消去が行われ、相殺された債権に対応する貸倒引当金額が減額修正された場合、減額修正された貸倒引当金が税務上損金として認められていないものであれば、連結前の将来減算一時差異は消滅するため、個別貸借対照表に計上した繰延税金資産を連結手続上、取り崩すことになります。

(三)子会社の資産及び負債の評価差額

資本連結手続上、子会社の資産及び負債は、投資取得日又は支配獲得日の時価をもって評価されますが、時価評価額うち発生年度の課税所得の計算に含まれていないものは、一時差異に該当するものとされます。

  1. 資産について時価評価を行い評価減が行われた場合、当該資産を販売した年度においては、個別損益計算書上の税金費用が連結損益計算書上の利益に対応する税金費用に比べて小さくなり、将来減算一時差異と同じ効果を有します。したがって、資産の評価減に対しては繰延税金資産を計上することになります。

  2. 資産について時価評価を行い評価増が行われた場合、当該資産を販売した年度においては、個別損益計算書上の税金費用が連結損益計算書上の利益に対応する税金費用に比べて多くなり、将来加算一時差異と同じ効果を有します。したがって、資産の評価増に対しては繰延税金負債を計上することになります。

  3. 負債について時価評価を行い評価減が行われた場合、当該資産を販売した年度においては、個別損益計算書上の税金費用が連結損益計算書上の利益に対応する税金費用に比べてて多くなり、将来加算一時差異と同じ効果を有します。したがって、資産の評価増に対しては繰延税金負債を計上することになります。

  4. 負債について時価評価を行い評価増が行われた場合、当該資産を販売した年度においては、個別損益計算書上の税金費用が連結損益計算書上の利益に対応する税金費用に比べて小さくなり、将来減算一時差異と同じ効果を有します。したがって、資産の評価減に対しては繰延税金資産を計上することになります。

  5. 資本連結手続を行う場合、子会社の資産及び負債の時価評価により生じた評価差額は資本として処理されることになりますが、その金額は対応する税効果額を控除した純額となります。

  6. 子会社に適用される税率が変更になった場合、繰延税金資産又は繰延税金負債の残高の増減や、評価差額の実現に伴う取崩しは、法人税等調整額として計上されます。

  7. 資本連結手続上、子会社の資産(負債)の時価評価にあたって計上すべき繰延税金資産は、回収可能性の検討が必要になります。

(四)子会社への投資に係る一時差異

子会社への投資の連結貸借対照表上の価額と親会社の個別貸借対照表上の簿価との差額について、将来税金の増減効果が生ずる場合には、一時差異に該当します。

<投資に係る将来減算一時差異>

投資後に子会社が損失を計上したとき、また資産の部に計上された連結調整勘定の償却を行ったとき、連結持分額が親会社の個別貸借対照表上の簿価を下回る場合は、将来減算一時差異が生じます。
投資に係る将来減算一時差異について、次の要件のいずれも満たす場合は、連結手続上、親会社において繰延税金資産を計上します。

  1. 将来減算一時差異が、税務上の損金算入が認められる評価減の要件を満たすか、又は、投資の売却によって解消される可能性が高いこと

  2. 繰延税金資産の計上につき、回収可能性に係る判断要件が満たされること

<投資に係る将来加算一時差異>

投資後に子会社が利益を計上したとき、また負債の部に計上された連結調整勘定の償却を行ったとき、連結持分額が親会社の個別貸借対照表上の簿価を上回る場合、将来加算一時差異が生じます。
投資に係る将来加算一時差異について、その消滅時に次のいずれかの場合に該当すると見込まれるときは、連結手続上、親会社において繰延税金負債を計上します。

  1. 親会社が在外子会社の利益を配当金として受け入れるときに、親会社と当該子会社の所在する国又は地域における税率の差により追加納付税金が発生する場合

  2. 親会社が国内子会社から配当送金を受けるときに、当該配当金の一部又は全部が税務上益金不算入として取り扱われない場合

  3. 親会社が保有する投資を第三者に売却する場合

(五)その他

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