一時差異の把握と種類
(一)一時差異の把握
一時差異とは、貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と税務上の資産及び負債の金額との差額をいいます。
一時差異には次のようなものがあります。
- 財務諸表上の一時差異
- 収益又は費用の帰属年度が相違するから生ずる差額
- 資産の評価替えにより生じた評価差額が直接資本の部に計上され、かつ、課税所得の計算に含まれていない場合の当該差額
- 連結財務諸表固有の一時差異
- 資本連結に際し、子会社の資産及び負債の時価評価により評価差額が生じた場合の当該差額
- 連結会社相互間の取引から生ずる未実現損益を消去した場合の当該差額
- 連結会社相互間の債権と債務の相殺消去により貸倒引当金を減額修正した場合の当該差額
(二)一時差異の種類
一時差異には、差異が生じたときに税務計算上加算され、将来当該差異が解消するときに減算される「将来減算一時差異」と、差異が生じたときに税務計算上で減算され、将来当該差異が解消するときに加算される「将来加算一時差異」があります。
(1)将来減算一時差異
- 個別財務諸表
会計上の費用計上時期と税務上の損金算入時期が異なることから生ずるもので、税金の前払いの効果のある一時差異が将来減算一時差異となります。 税金の前払い項目は、法人税申告書別表4において所得計算上、会計上の利益に加算されます。
主な前払い項目としては次のようなものがあります。
- 引当金の繰入超過額
- 減価償却費の限度超過額
- 貸倒損失否認額
- 有価証券評価損否認額
- 棚卸資産評価損否認額
- 未払事業税
- 連結財務諸表
連結貸借対照表上の資産額(負債額)が連結会社の個別貸借対照表上の資産額(負債額)を下回る(上回る)場合は、連結財務諸表上の将来減算一時差異となります。例として、次の項目が挙げられます。
主な前払い項目としては次のようなものがあります。
- 連結上の会計方針の統一を連結手続上で行った場合に、連結貸借対照表上の資産額(負債額)が個別貸借対照表上の当該資産額(負債額)を下回る(上回る)ときの当該差額
- 連結会社相互間の取引から生ずる未実現利益の消去額
- 子会社資本の親会社持分額と親会社の個別貸借対照表上の投資原価との差額(親会社持分損失が生じた場合)
(2)将来加算一時差異
- 個別財務諸表
会計上の費用計上時期と税務上の損金算入時期が異なることから生ずるもので、税金の繰延べ効果のある一時差異を将来加算一時差異といいます。 税金の繰延べ項目は、法人税申告書別表4において所得計算上、会計上の利益から減算されます。
主な繰延項目としては次のようなものがあります。
- 利益処分による圧縮記帳
- 利益処分による特別償却
- 利益処分による租税特別措置法の諸準備金引当金の繰入超過額
- 連結財務諸表
連結貸借対照表上の資産額(負債額)が連結会社の個別貸借対照表上の資産額(負債額)を上回る(下回る)場合は連結財務諸表上の将来加算一時差異となります。
例として、次の項目が挙げられます。
- 連結会社相互間の取引から生ずる未実現損失の消去額
- 連結会社相互間の債権と債務の消去による貸倒引当金の減額修正額
- 子会社資本の親会社持分額と親会社の個別貸借対照表上の投資原価との差額(親会社持分利益が生じた場合)
(三)一時差異に準ずるもの
税務上の繰越欠損金は、繰越期間に課税所得が生じた場合、課税所得を減額でき、その結果納付税額が減額されるため、税金の前払いの効果のある一時差異と同様の税効果を有するものとして取り扱います。
また、税務上の繰越外国税額控除は、繰越期間に外国税額控除余裕額を限度として税額を控除することが認められることから繰越欠損金同様税金の前払いの効果のある一時差異と同様の税効果を有するものとして取り扱います。
なお、一時差異及び一時差異と同じ税効果を有する繰越欠損金等を総称して「一時差異等」といいます。
(四)一時差異等に該当しない差異(永久差異)
会計上は費用又は収益として計上されるが、税務計算上は永久に損金又は益金に算入されない項目は、将来、税務計算上で加算又は減算させる効果をもたないため一時差異等には該当せず、税効果会計の対象となりません。
主な永久差異項目としては次のようなものがあります。
- 交際費(限度超過額)
- 寄付金(限度超過額)
- 役員賞与
- 法人税、地方税
- 延滞税、罰科金他
- 受取配当金益金不算入額