個別キャッシュフロー計算書の作成手順
直接法によるキャッシュフロー計算書の作成手順
<営業活動によるキャッシュフロー>
- 売上高に売上債権の純増減を調整して営業収入を算出表示
- 売上原価に棚卸資産と仕入債務の純増減を調整して原材料または商品の仕入支出を算出表示
- 損益計算書と製造原価の人件費、退職給与の支払額、役員賞与の支払額を合計して人件費支出を算出表示
- 販売費及び一般管理費及び製造原価に含まれる経費から減価償却費を差し引いて、営業支出に結びつく未払費用等の純増減額を調整してその他の営業支出を算出表示
- 損益計算書の「受取利息及び受取配当金」と「支払利息及び割引料」から貸借対照表の未収利息や未払利息の増減額を調整して受取利息及び受取配当金の受取額と支払利息及び割引料の支払額を算出表示
- 投資活動でも財務活動でもない取引で営業活動にも直接かかわらないような災害による保険金収入、損害賠償金の支払など表示
- 損益計算書の法人税等から未払法人税等の増減額を調整して法人税等の支払額を算出表示
<投資活動によるキャッシュフロー>
- 現金及び現金同等物に含まれない定期預金の預入れによる支出額と払戻しによる収入額を表示
- 有価証券の取得による支出と売却による収入を表示
- 有形固定資産の取得による支出と売却による収入を表示
- 投資有価証券の取得による支出と売却による収入を表示
- 貸付による支出と回収による収入等を表示
<財務活動によるキャッシュフロー>
- 短期借入金の借入による収入と返済による支出を表示。なお、短期間に連続して借換えを行う場合などは純増減額を表示可
- 長期借入金の借入による収入と返済による支出を表示
- 社債の発行による収入と償還による支出を表示
- 有価証券の取得による支出と売却による収入を表示
- 株式発行増資による収入を表示
- 株主に支払った配当金額を表示
間接法によるキャッシュフロー計算書の作成手順
<営業活動によるキャッシュフロー>
- 損益計算書の税引前当期純利益をベースに計算
- 減価償却費等の非キャッシュ項目の調整
- 損益計算書の「受取利息及び受取配当金」と「支払利息及び割引料」を税引前当期純利益から減算表示
- 投資有価証券売却損益など、投資活動に記載する取引に係る損益を税引前当期純利益から減算表示
- 投資活動でも財務活動でもない取引で営業活動にも直接かかわらないような災害による保険金収入、損害賠償金の支払などの損益を税引前当期純利益から減算表示
- 営業活動にかかわる資産と負債の増減額を加減算表示
- 税引前当期純利益から減算した「受取利息及び受取配当金」と「支払利息及び割引料」から貸借対照表の未収利息や未払利息の増減額を調整して受取利息及び受取配当金の受取額と支払利息及び割引料の支払額を算出表示
- 税引前当期純利益から減算した投資活動でも財務活動でもない取引で営業活動にも直接かかわらないような災害による保険金収入、損害賠償金の支払など表示
- 損益計算書の法人税等から未払法人税等の増減額を調整して法人税等の支払額を算出表示
<投資活動によるキャッシュフロー>
直接法と同じ手順
<財務活動によるキャッシュフロー>
直接法と同じ手順
各項目の表示区分
- 利息及び配当金
利息及び配当金の表示区分については、次の二つの方法の選択適用が認められています。
(1) 受取利息、受取配当金及び支払利息は、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法
(2) 受取利息及び受取配当金は、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払利息及び支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法
なお、選択した方法は毎期継続して適用しなければなりません。
- 法人税等
法人税等(住民税及び利益を課税標準とする事業税を含む)に係るキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に「法人税等支払額」として一括して記載します。
なお、電気供給事業、ガス供給事業、生命保険事業及び損害保険事業に係る事業税は収入金額を課税標準としていることから、これらの事業税の支払は、「営業活動によるキャッシュ・フロー」となりますが、、「法人税等支払額」には含めません。
- 消費税等
消費税及び地方消費税の「キャッシュ・フロー計算書」上の表示としては次の方法が考えられます。
(1) 課税対象取引に係るキャッシュ・フローを消費税等込みの金額で表示する方法
(2) 課税対象取引に係るキャッシュ・フローを消費税等抜きの金額で表示する方法
(3) 消費税等抜きの資産・負債の増加額又は減少額に、あるいは、収益又は費用の額に、これらに関連する消費税込みの債権・債務の期中増減額を調整して、各表示区分の主要な取引ごとのキャッシュ・フローを表示する方法
消費税等に係るキャッシュ・フローについては、いずれの処理も認められます。ただし、企業が採用した処理は、毎期継続適用する必要があります。
なお、消費税等の申告による納付又は還付に係るキャッシュ・フローは、課税取引に関連付けて区分することが実務的に困難なため、「法人税等支払額」と同様に「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に消費税等支払額(還付額)又は未払(未収)消費税等の増減額として記載します。
- リース取引
リース取引に係る支払リース料及び受取リース料の表示区分については次のとおりです。
(1) 借手側の支払リース料
会計上、売買処理された借手側のファイナンス・リース取引に係る支払リース料のうち、元本返済額部分は、当該リースが資金調達活動の一環として利用されているものと認められることから、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。
また、利息相当額部分については、企業が採用した支払利息の表示区分に従って記載します。
なお、利息相当額部分を区分計算していない場合は、支払リース料を「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。会計上、賃貸借処理した借手側のファイナンス・リース取引に係るキャッシュ・フローは、その支払リース料が一般に営業損益計算に含まれると考えられることから、原則として「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。
オペレーティング・リース取引に係る支払リース料のキャッシュ・フローは、通常は営業損益計算の対象に含まれるため、原則として「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。(2) 貸手側の受取リース料
貸手側の受取リース料については、それが営業損益計算の対象となる場合、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。
それ以外の受取リース料のうち、元本返済額部分については「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、利息相当額部分については、企業が採用した受取利息の表示区分に従って記載します。
ただし、利息相当額部分を区分計算していない場合は、受取リース料を「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。- 先物契約等
先物契約、オプション契約、先渡契約及びスワップ契約等を、リスクヘッジの目的で利用している場合は、その対象となった取引に係るキャッシュ・フローと同一表示区分の同一項目に、これら先物契約等に係るキャッシュ・フローを表示します。
リスクヘッジ目的以外にこれらの先物契約等が利用されている場合は、短期的な売買差益の獲得を目的としているものと考えられるので、これら先物契約等に係るキャッシュ・フローは、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載します。
ただし、事業目的としてこれらの先物契約等を短期売買目的で保有している企業にあっては、当該先物契約等に係るキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載することになります。
- 為替差損益
外貨建の現金及び現金同等物の為替相場の変動による円貨増減額は、現金及び現金同等物の増減額の調整項目である「現金及び現金同等物に係る換算差額」として区分表示します。
損益計算書において計上された為替差損(益)のうち、原則として、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計欄以下の各項目又は「営業活動によるキャッシュ・フロー」以外の各表示区分に記載される取引に係る為替差損(益)は税金等調整前当期純利益に対する加算項目として表示されます。